目次。<「みずいろ-A」



〜3 いざない。

だから、やはり水色なのである。これはたぶん空の色なのであって、なにもないのに、あるわけないのに、ふと仰ぎ見ている。いつでもどこでも何気なく見ている、そんな色なのである。はてしなく遠いかなたの世界へと自分をいざなうような、そんな色である。届かない、それでいてそれへと吸い込まれ、誘われてゆくような、そんな色である。しかも、始めから届かないとわかっている、そんな少しさめた、冷ややかで、現実的で、そしてどこか冷静で理知的な色なのである。

現実にはない何かを求めていて、それがあおぎ見る空の色なのである。
あおぎ見ながら肉体がゆるみ開いていて、自分と外の世界がどこかで交流し溶け合っている。身体(からだ)が何かを求めていて、どこか遠くの世界へと誘われている。それはまた、気分の切りかえや区切りでもあって、とまどい、ためらいながら一息ついている、そんな瞬間である。そうした感覚と情緒の世界である。自分自身の中にある生理や神経といったものが、いつのまにか、そういうリズムの中で移ろいでいるのである。

 戻る。                       続く。