< 続:「春カスミの世界」
〜1、潤い。
春カスミとは、薄い霧(キリ)のことで、それが、 地上と空全体を覆い、長くとどまっている状態である。 その正体は水蒸気で、直射日光によって暖められた 地表面の水が、相対的に大気よりも暖かくなって、 大気中に水蒸気となって放出されるのである。 だから、たいてい春カスミの強い日は、空が晴れていて、 雲がなく、むしろ、地上と空全体が非常に薄い雲、 つまり、霞(カスミ)に覆われるのである。 暖められ軽くなった水蒸気は、自分より重い大気の中から 浮き上がって来て、上昇し続ける。ということは、 春カスミであり続けるには、地表面から水分が 蒸発し続けなければならないのである だからまた、春カスミは、市街地では起こりにくく、 郊外の川辺や田んぼ、山々などの湿気と水分の豊かなところで、 顕著に発生する。近代化前の江戸時代までの日本は、 「豊芦原の瑞穂の国」といって、常時、きりとかカスミで覆われて いたと思われる。現在とかなり様子が異なるのである。 例えば、絵画を見ても、その背景はたいてい雲である。 くもで囲まれ、雲とカスミが枠(ボーダーライン)となった風景である。 |