< 続:「春カスミの世界」


〜2、復活。


春カスミとは、つまり、気候の穏やかさであり、水の豊かさであり、日差しの暖かさである。それは、冬の終わりを告げる色であるとともに、生命の再生と復活を告げる色でもある。 

この豊かな水と光に育まれて、閉ざされた冬の世界から、新たな生命がめばえて来る。より豊かな水と光を求めて。だから植物は最初、ヨコに広がる。太陽の光を最大限に受け入れようと、枝葉の表面を漏れなく覆うようにヨコに広がる。だから外見上、丸くなる。枝葉は空に向かった半円球のカタチを指向する。それは、上空の半円状の軌道を描いて動く太陽に対して、最も効率よく光を吸収する。

また、それは生き物側から見ても、そうしたカタチが最も効率がよいのである。少ない材料でもって最大限に自己の体積を維持するには。それが最も理に適った、合理的なカタチなのである。それは、野原の草花がそうだし、一本一本の木々も、林も、森も、山々の見た目の輪郭も、すべての角が無くなって、丸みをおびたカタチになっている。

そしてこの世に生れ出たばかりの、植物の生命の色が鮮やかに、そのままの、あらわな形と色となって、白いカスミのなかに浮かんでいる。シロ色の背景の中で、様々ないろんな色というのが、その純粋な色(明清色)を保ったまま、カスミのなかで現れて消えてゆく。

戻る。              続く。