< 指向性


〜5、「指向性」


このような主体としての人間の「指向性」は、
1、 物理的な感覚として、
2、 生理的な情緒として、
3、 思考の考え方としても、現れる。

自己は、空間の広がりの中だけでなく、
自己が変化し続ける時間の流れの中でも現れる。
存在は、カタチという空間だけでなく、
指向性という時間の流れの中でも、とらえられるのである。

「指向性」とは、自己の存在のカタチといったものが、
現実の中で維持され連続して行くための必然のすがた、
自己の存在の仕方なのである。そして、
それが持つ固有の原理と内的必然性といったものは、
個性的で特徴的な変化の方向性なのである。
空間の中でカタチとして見えたのが、時間の流れのなかでは、
変化の仕方として見えるのである。

そして、この変化の動力となっているのが、
自己同一であり続ける固有の、内的な原理と、
その必然性なのである。そしてこの必然性といったものが、
いったいどこからやって来るかと言えば、それが「風土」なのである。
私たちが生きている現実の世界なのである。

自然環境と人間自身が、精神の世界で明確に区別されていない。
感覚から思考へと、いまだ至(いた)らないのである。いまだ、
情緒の世界から抜け出ることのない世界である。そしてそれは、
人間関係でもそのまま現れている。

肉体はカタチとして区別されても、精神はいまだ、
共同体と対立する個人として意識されないままの状態である。
個の精神は、共同体とは別のものとして自立することがないのである。
精神はいまだ、自己と他者が区別されることなく、
混沌として混じり合っている状態なのである。


戻る。               続く。