< 指向性
〜6、「風土」
こうした言わば、ゼロの状態から何かがめばえ、生まれて、 形を整えて来るというのではない。それは、根拠ゼロの、 頭の中での空想に過ぎないのである。 それは、ただの偶然に過ぎないのであって、 繰り返される偶然の必然の結果として、すがたを現わしたのである。 それは、人間の意思とはまったく無関係に、そうなるしかないもの、 そうするしかなかったという、そうした偶然が、際限なく繰り返された 結果のすがたなのである。そしてそれが、すでにある現実のカタチとなり、 意識されることのないまま、いつの間にか、原理となって、システム として定着したのである。すでに出来上がった事実となって行くので ある。 こうした偶然の際限なく繰り返される、様式といったものは、 言い換えれば、それが現実に生きている人間の自然なのであって、 地域的にも、時間的にも、特定され、限定される自然のあり方、 つまり、「風土」そのものなのである。 それは人間の側から見ると、人間が生きて行く条件や制約といった もので、避けることも、抵抗することもできない方向性として、 あるいは、自分自身の存在の必然性・方向性として、 始めから条件づけられたものなのである。また、そこから 存在の仕方というのが規定されて来るのである。 |