< 指向性


〜7、「始まり」


新しい現実、それは未知の世界であって、何もわからず、
見たことも聞いたこともない世界である。だから、
それを何かの目的としたり、概念化したりすることが出来ないのである。
そもそも、なにもかも不明なのだから。にもかかわらず、
そうした世界を生きている。

ここで生きているということは、そうするしかないからである。
まったく、自分の願いや意思とは関係のないことで、
不本意ながら、そうするしかないからである。そうする以外に、
生きて行く方法がないから、なのである。

だから、求めるとか、導かれるといううよりも、せっぱつまって、
追い立てられて、現実の何もかもが破壊されて、もはや、
そこに踏みとどまることが不可能になってからである。
そうやって、始めて出て行くのである。仕方なしに。

そうやって、やむにやまれず、まことに致し方なく、
異質な新しい現実へとでて行く。出て行くしか無かったのである。
それしかあり得なかった。そうする以外に生きて行く方法が無かった
のである。これが現実なのである。

自分の気持ちや意思よりも先に、生きて行かなければならない。
などという、どうにもならない現実の要求が、自分を動かしている
のである。そうした意味で、それは人間の自由意思など入る余地
が全くない、必然性、宿命とでもいったものなのである。


戻る。               続く。