< 象徴の世界


〜2、「うつろい」


しかし、このシロい霧も、2,3時間もするとキレイに晴れる。そして、この霧というのが、もっと、もっと非常に薄くなって、ほぼ一日中、または昼過ぎまでずっと続くのが、春ないし初夏のカスミ(霞)なのである。地表面だけでなく天空全体をうすシロく、覆い尽くすのである。

だから地平線上の白い部分と天空の青い部分のグラデーション(濃淡)が消えて、地平線上も天空もあまり変わらない、ほとんどシロ色なのである。それは、地表面から水蒸気が常に上昇し続けているのである。だから、世界全体がシロっぽく見えるし、それが昼を過ぎても消えることがないのである。

空気中の水蒸気が霧よりも非常に薄く、そして日中の太陽光自体が明るく、そうしたことが、目に見える風景というのを、かえって普段よりも明るく感じさせている。どこからも、どんな角度からも、ほぼ均等に光が入り込んでいる。

白いカスミの乱反射をくり返す「光」といったものから、光と陰が方向性が消えて、影を失い、まるで、「光」そのものの中から景色が映し出されたように見えるのである。遠くのものも近くのものも、世界全体が、薄くシロ色が混じっている。それは、空気の白さであって、それが世界全体を覆っているのである。


自分と世界との間になにかがあって、それが自分を包み、そしてその中をただよいながら移ろいでいる。気づかないまま自分が、ゆるやかな時間の流れのなかを過ぎてゆく。それが情緒のあり方というもので、知らぬ間に意識することなく、いつの間にかその中に入り込んでいて、溶け込んで、いっしょになって現実の中をただよっているのである。

戻る。             続く。