「春カスミ」


〜1、薄い雲。


カスミ(霞)とは、薄い霧(詣)のことで、ほぼ一日中、景色が
白いカスミの中に覆われている。それは、言い換えると、
非常に薄い雲が地上に降りて来て、地上と天上の世界が
つながったのである。それは神々の世界なのかも知れない。
春興ミが象徴するのは、そうした生と誕生、再生と復活、
めざめの世界である。

春興ミが、ほぼ一日中続くのは、それが霧(詣)などとは違って、
一時的なものではなくて、継続する持続的なものだということ
である。では、いったい何がそうさせるのかと言えば、
春興ミを発生させる気温と湿度が、そうなのである。

春興ミの白(シロ)さとは、この気温と湿度がもたらす、
水蒸気の、搗アする安定したシロさなのである。
それは、春の太陽の暖かさであり、そしてまた外気温の
ほんのもう少しの冷たさである。この温度の差が
水蒸気を発生させる条件となっていて、これに南からの
暖かい気団と、地表面の雪解け水が、水蒸気の水分を
補給し続けているのである。だから、キリほどではないが、
風景がかすんで見えてきて、それがずっと続くのである。


戻る。             続く。