「観念の世界」


~1、観念的映像。


なにも意識せずに眠っている状態では、外からの光はあり得ず、それに反応することもない。だから夢は、視覚神経というよりも、その後の、脳の中で勝手に作り出した映像である。外の現実の裏付けのない純粋の観念だけで夢を見ている。現実を離脱した観念だけの、ありもしない仮空の映像の世界を自分の中で作り出している、自分だけの世界である。

しかし実際には、そうしたことは、目を開いた覚めた状態でも見ている。現実世界の中の印象的で特徴的な部分だけが、異様に大きく鮮やかに見えても来るし、そう見えていると思えてくる。そして、そうであるはずだという思い込みが、無いものを確かに見たと感じたり思い込んだりもするのである。

いわば、誇大に拡張された思い込みが、現実を別のものとして見せている、または見ようとしている、見ていると思い込んでいるのである。視覚の映像が思い込みの映像に歪曲されて、それがいつの間にか、無いものを見たと思い込んでしまうのである。いわば、現実から遊離逸脱した観念的映像である。幻覚に近いものである。それを現実から切断された観念の世界で見ているのである。


戻る。             続く。