「紅白」


〜2、秘密。


確かにこの世には公然の秘密がある。それはどうにもならないことであって、仮にそれが、どうにかなるものであれば、隠(かく)す必要もないのである。どうにもならない以上、それは隠し続けなければならないし、見ても聞いても触れても、ならないことなのである。仮に、それを知ったとしても、知っていると思ってはならないのである。

見えていても、見てはならないし、見たと思ってもならないのである。見なかったことにするしかないのである。そして実際、見えているものも、自分の目には見えなくなってしまっている。それが感じられなくなっていて、それが当たり前で、普通のことのように思えて来るのである。そうやって自分を偽(いつわ)り、偽りの自分を作り上げて、自分の現在の居場所にしがみついている。そうである限り、何も見えないし、見てはならないし、見えても来なくなっている。

それは隠し続けなければならないし、フタをしてけっして開いてはならないし、開けて見てはならないものなのである。誰もが心の奥底で知っていることなのであるが、それゆえに、また、そうだからこそ、知ってはならないし、そして、それ以前に意識すらも、してはならない
ことなのである。

それは戒(いまし)めであり、オキテ(掟)であり、紅白のパターンとしてイメージ゙化された印象、象徴化されたイメージなのである。触れても聞いても立ち止まってもならない、そしてまた、それに近づいてもならない、あの世とこの世の境界線上にある、結界なのである。それは、立入禁止の標識なのである。

戻る。              続く。