「豊芦原の瑞穂の国」
〜2、豊かさ。
例えば、この南の島々に比べると、日本の方が日照と雨量共に劣ると思えるのに、むしろ実際には、そこに生息する動植物の種類及び量とも、日本列島の方がどう見ても豊かなのである。ではいったい、どういう訳でそうなるのだろうか? その原因となったのは、日本列島の際立つ四季にあるように思えるのである。四季の冬が生き物たちの繁殖をリセットするのである。生物のすべてをゼロの状態へと巻き戻すのである。そうやって、またゼロの状態から始めることになるのである。生態系というのが、またゼロの状態から、すべての動植物がまた同じスタートラインから復活し出発することになるのである。 つまり、巻き戻される。強い生物が獲得した独占的地位、既得権益といったものが破壊されて、また元の始点(春)で、ゼロの状態から始まることになるのである。そして、この開始時点というのが、すべての生物にとって機会均等なのである。 すべての動植物、すべての生き物たちが互いに協力し、同時にまた、互いに対立しながら生きている。この時点では誰も独占的地位に立つことがないのである。また仮に繁栄の頂点に立つことがあっても、すぐに秋がやって来る。枯れるか、冬眠するか、死ぬかである。それが再生するには、また春を待つしかないのである。 これが先に述べた南洋の四季のない、熱帯雨林との決定的な違いなのである。そしてまた、これが日本列島の動植物の繁栄、その数と種類の豊かさにつながっているのである。 |