「精神異常」


〜4、囲いの中。


どういうことかと言うと、人間はシステムという囲いの中に居ると、何か大事なことが見えなくなるし、気づかなくなるし、またそれを見ようともしなくなるということである。しかしまた、それがシステムなのであって、そして、そのためにシステムというのが必要だったのである。人間の感覚や意識をコントロールし、型にはめて、定形化し、それ以外については何も感じなくするというのが、システムの本来の機能なのである。

文明そのもの、ないし社会のシステムというのは、人間の生き方を制約し条件付け、方向づけ、そうやって意識というのを標準化し、定形化し、パターン化してゆくのである。その方が生きやすいから。それが文明というものの利便性なのである。必要であり、目的であり、機能そのものなのである。

だからまた従って、その中にいると感覚が偏(かたよ)ってくるし、意識が歪められてくる。中にいるとわからなくなるのである。だから外へ出て、自分の外から自分のいる場所を見なければならないのである。「外(そと)」というのは、文明ないし社会というシステムの届かないところ、すなわち「システムの外」という意味である。

自分を外からながめて見て初めて、自分の本当のすがたが見えてくるのである。自分がいまいるところから離れて、外から見て初めて本当の客観的な自分というのが見えてくるのである。しかし、それはまた、恐ろしいことなのである。自分で自分をのぞき込むことになるのだから。のみならず、自分というのが周りのみんなとどこか違うということを認めざるを得なくなるからである。

もどる。              つづく。