「めざめ」
〜1、不適格者
しかし、そうした当たり前のことを誰もが避けるのでる。それがもっとも賢い生き方だからである。そして見えてくるのは自分の思い込みと偏見と気持ちや、まわりのみんなの空気や心情といったものだけである。要するに、個が埋没した感覚的な情緒だけの世界である。そうした情緒だけの、主観と客観の区別のない曖昧な世界では何でもできる。どんなことでも思いのままなのであって、この世に恐ろしいことは何もないシアワセな世界である。法律や自意識や良心などといったものは、あってもなきがごとしである。 つまり、自分自身といったもの、反省する個の自意識といったものが存在しないからである。死ぬこともなんら恐ろしいことではなくなる。個人というのが、つまり、自分自身というのが存在しないからである。自分の理由や根源というのが自分以外の他人に支配されているのである。だからシアワセなのである。シアワセで居られるのである。悩みもなくなるし、底なしの自分の精神に苦しむといったことからも解放された世界である。 |