「めざめ」
〜7、条件。
自分というのが、なにか別の者になってしまっている。異質で未知な、別世界の住人となってしまっている。そして、それが自分にもわかるし、自覚せざるを得ないのである。 自分自身というのが、自己の同一性というのが破壊されて、なにか別の原理と必然性をさがし始めている。そうする以外にないのである。そうやってのみ、自分を維持し、保存し、継続してゆくことが可能なのである。そうする以外にないのである。自分というのが、自己の同一性・一体性というのが何か別のものに変化している。こうしたことは歴史上何度も起こっている。新たな人間のモデルが生成されたのである。民族の生成とはこのことなのである。 そうするしか無いのである。選択肢といったものは初めから無いのである。そうする以外になく、そこから逸脱して自己をあざむき、滅却して失ってゆくか、あるいは、新たな世界、未知の世界の住人となるしかないのである。もちろん、適応出来ずに消滅することも当然のように起こるが、それ以外に残された方向がないのである。 そうやって自己が最終的に破壊されることもあるが、再生することもあるのである。どちらにしても、本人の意思とはほとんど関係のない、偶然なのである。偶然だというのは、本人の意思とは係わりのない、絶対的な強制力、つまり偶然、言い換えれば、現実の自然環境と歴史的条件が、当の本人を規制し条件づけ、有無を言わせずに方向づけるからである。 |