「島」


〜4、散る。


変わり身がはやく、そしてまた誰もがそうであり、そしてそれがあまりにも手際よく鮮やか過ぎるのである。明治維新がそうだったし、終戦直後がそうだったし、20世紀末の国際化(グローバル化)がそうだった。誰もが自分のことを深く考えることもなく、ただ周りに流されて行くのである。

自分はみんなと同じでないと気が済まないのである。ただそれだけなのである。それだけでとっても居心地がよく、気持ちもよくシアワセなのである。外(そと)の世界がどうであろうとかかわりなく、みんなの中に自分がいる、ただそれだけで十分なのである。それ以外の生き方を知らず、それしかできず、許されず、またそれだけが自分が生きている世界なのである。

中世日本文学の「心中もの」小説、あるいは今もたまに起こる一家心中(子殺し)、また戦時中の玉砕・万歳突撃(集団自殺)、といったものがそうである。日本という狭い島国の中では周りから見捨てられると生きて行けないのである。ならば、さっさとアッサリ自分から死んだほうがよいのである。美しいのである。そのほうが綺麗だし、まるでサクラの花びらのようにはかなくも美しく感じられてくるのである。

どうせ、生きてゆくことが出来ず、死ぬしかないと始めからわかっていることなのだから、最後だけは美しくありたいと願うのである。そしてまた、そこにはかなくも貴い人間の美しさみたいなものを感じるのである。まるでサクラの花びらが散るときのように。私ども「筆者」には全く理解できない世界である。

もどる。              目次へ