「思いのまま」


〜4、幸福。


何の規制も制約もない、だからまた責任もリスクもない。だから自由というのである。それは、なにも成し得ない非現実の世界なのである。なに一つ現実に成し得ない妄想の世界だからこそ、それがまた、限りなく自由な世界のように思えて来るのである。妄想とは、つまり、閉じた主観性の世界である。

客観的な現実も、そしてそれが目指す、普遍的な方向性をも喪失している世界である。基準と目標を喪失しているのである。だからまた、前進も後退もなく、背面も正面もなく、生と死もなく、自分と他人の区別もなく、苦しみや悩みからも解放された世界である。なにひとつ、責任というのが存在しないのである。

だからこそ、それが気ままなのであり、自由なのであり、気まぐれな感情だけが支配するのである。幸福とは、このことなのである。精神が自らを意識することがないからこそ、あるいは自分は自分であると自覚し得ないからこそ、自分に責任もリスクもなく、また、何ら制約も受けずに生きることが出来るのである。

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