「キズナ(絆)」
~1、情緒。
肉体と精神は別々に存在するものではあるが、しかしそれらは一体のもので、分離・独立するとか、自立するということがないのである。自立して独立した存在としてお互いが補い協力してゆく、そういう関係ではないのである。それは本来、同じものを別の角度から見ているに過ぎないのである。 個人というのが、いまだ自立することなく、自己意識というのが自覚されない状態である。つまり、精神の中で自分と他人の区別がハッキリしない、そんなキモチ悪い世界である。アイデンティティーというのが、個としてとらえられず、共同体の共有意識、ないし無意識の情緒としてとらえられている。 これがまた、儒教社会の特徴でもあって、コトバとか理屈ではなく、情緒とか気分の雰囲気でもって自意識がとらえられている。自分と他人との間にある境界線、ケジメといったものが限りなく曖昧で不明瞭なのである。神聖不可侵であるはずの、自己の精神の領域や、人格といったものが限りなくぼやけている。自分と他人との間に明確な区別がない。 |