「祭り」


〜1、発見。


人間が、自分を「よし」として肯定するのは、いったいどういうことなのだろうか? それはいったい、どういうところで、どういう場面で起こることなのだろうか?

人間が自分を「よし」とするのは、以前の状態、以前の自分を否定するところに成り立つものである。以前の自分を捨てて、新たな、異質で、未知の世界に入ったときである。そこでは、自分で自分のことを「よし」とするか、以前の状態に戻るしかないのである。

「よし」とするのは、自分の判断と決断、自分の意志に基づいているのである。自分で自分をとらえているし、自分というのが、自分の主体として捉(とら)えられてもいる。ここでは現実の自分と、観念の世界の自分とを区別しているし、以前の自分と現在の自分とを別のものとして見ている。自分で自分を問うてもいる。そして、自分の中で自分を発見している。

これは人間が、現実に生きる自分自身というものを否定し、新たな再生へと向かう情景である。そしてそれはまた、自分自身はどうなのかという自分を意識する場面でもある。それは自分自身の否定、そしてその否定の肯定、破戒と創造、生と死、没落と復活、衰退と繁栄、あるいは嘆きと祈りといったもの。言い換えると、人間が自分の存在を否定すると同時に、新たな自分自身へと自己を再生する場面なのである。

もどる。              つづく。