「家父長制」


〜1、自然な心情。


家父長制は、家の内部における上下の秩序であり、それは、家の外での上下関係の秩序によって安定し、固定したものとなる。だから、家父長制の長は、上司や国家や民族の長に対して限りなく忠実である。そうしてのみ、自己の立場を正当化できるからである。また、そここそに社会の安定の基礎がある。それは、自然のままの状態を、そのまま固定し、そしてそれを認め、正当化し、理由づけしたものである。

それは、社会のだれにとっても共有の全体感情であり、生理的な情緒の世界であり、自己感情や自意識とは別のものである。ごく自然の当り前の感情と思われている。自意識とか理性が社会を成り立たせているのではなくて、こうした、理屈抜きの自然な感情が社会の基礎となっている。または、そう思われている。

しかし、自然な感情そのものが偏見ではないのか?感情は情緒から来ている。そして情緒は自然環境や文化から生成されてきたものだ。とすれば、やはり偏見だと言えるし、歴史的・地理的概念だともいえる。実は、こうした概念や心情といったものを「自然な感情」と言っているのである。

              つづく。