「2:古代ギリシャ」
〜10、自己意識。
自分で自分を表現することが出来ない。なぜか? 自分で自分を自覚することが出来ないでいるからである。だから自分というのを、自分以外の他のものを通して表現しようとする。あるいは他人の精神に乗り移って、取り憑(ツ)いて現れ出ようとする。 では反対に、自分を通して自分を表現するとは、どういうことなのか? つまり、自己意識が問われているのである。自分の内部で、自分と自分が対立し対象化され、自分というのを客観的に見ているのである。そうやって始めて自分を語り始めることが出来るのである。 自分を客観的に見ているのは、自分を他人として見ているのである。このような精神の分裂と対立こそが自己意識であり、自己の精神が他者と区別され、独立し自立した内的必然性を持つ、自己意識といえるのである。 それは自分自身であって、自分にしかない原理であって、自分自身のリズムなのである。言わば、精神の音色(ねいろ)、あるいは、個性といったものなのである。けっして譲り渡すことも、もらうことも出来ない、私だけの、私の存在の必然性なのである。 |