「2:古代ギリシャ」


〜9、とまどい。


こうした情緒不安の原因となったのは、民族というのが何か別のもの、様々な異質な民族が織り合わさって、新たにギリシャ民族に統合されたことによる。民族というのが、それまでとは何か別のものになったのである。内容と実体において、以前とは別の民族になったということである。ここに、戸惑いと驚き、恐れやおののきといったもの、勇敢と臆病などといったものが、強く表面に出てくるのである。

おぼろげにかすんで見える霧の中で、ぼんやりと、いまにも消えてしまいそうな自分自身というのを見つめていて、そして同時に、その中から新たな自分というのを模索し始めているのである。たしかめ、定めようとしているのである。

自分自身の意味の確定を求めているのである。意識の世界の中で、自分自身を見つけ、握りしめようといるのである。自分自身と現実の生活の観念化が新たに達成されようとしているのである。

自分自身の理由と、一体性・同一性が、意識の世界の中で映し出され、踊り出て来て、現れ、まのあたりにするのである。否応(いやおう)なく自分自身というのが立ち現れて来るのである。そしてそれを認め、確め、意識せざるを得ないのである。

戻る。              つづく。