ヨーロッパのの起源(古代ギリシャ) p24


「生きる方法」



古代ギリシャ人は、始めて自らを形成するにあたって、ギリシャの自然を信じるしかなかった。他に何もなかったのだ。彼らは自分のすべてを、すでに捨てていたのだ。牧人が海へ乗り出すのも、農民が土地から離れるのもそうである。

生きて行かなければならないのである。そのまま行き倒れて、死ぬわけにはいかないのである。材料も、道具も、手段も、自分で見つけなければならない。しかも、すでにあるものの中に、目新しいものは何もない。

それが何か新しいものとして、生きるタネとなり得るのは、それ以前とは異なる利用方法、使い方においてのみである。それどころか、それ以前に、人間の精神がそうしたことを求め、
探し、のぞんでいなければならない。イヤ、正確に言うと、それを、求め、捉(とら)える以外に、生きてゆく方法がなかったのである。

現実にないもの、知らないもの、未知のもの、得体の知れないものを求めるというのは、もともと、非常識で異常なのである。ギリシャ人は、そうした精神の持ち主だった、というよりも、そうする以外に生きて行く方法がなかった、ということである。そして、ギリシャの自然、明るく明朗な自然は、それに素直(すなお)に答え続けたのである。


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