ヨーロッパのの起源(古代ギリシャ) p6


「余地」。




そうするしか無かったのである。それ以外に、
自(みずか)らを形成しうる余地がなかったのである。
そしてまた、今すぐにも自らを形成する必要にも
迫られていたのである。

それは、見えない壁といったものである。
そうした見えない壁で囲まれた枠の中でしか、
人間精神といったものは、
みずからを形成し得ないなのである。
そして、それに現実の姿とカタチを与えたのが、
この人間を取り囲む、現実の自然条件なのである。

それはシステムであり、原理なのである。とすれば、
どうしても、自己と他者との境界線を伴うのである。
こうした区切り線なしに原理は成り立たないのである。
このような区切り線、文明の境界線の中で繰り広げられる、
精神のあり方といったものは、どうしても規制され、
方向づけられ、条件づけられるのである。
そしてまさにこれが、ギリシャの自然条件だったのである。
このような条件の中から、
人間の生き方というのが規定されてきたのである。

だからまた、こうした自然と、そしてその精神といったものは、
一体のものであって、このような自然なしに、
このような精神も成り立ち得ず、また、この自然も、
そのようなものとして人間に意識されているのである。

  戻る。                   続く。