index < 日誌 < o四季 < 「四季の色」p6/ |
地平線が青いのは、秋の空である。そしてその青色が、それがそのまま天空にまでのびている。地平線から天空にいたる空全体にわたって、グラデーション(濃淡)といったものがほとんど見られないのである。これが、秋の空である。 それは初冬にも見られる透きとおるような青さである。乾燥していて、地表面に水蒸気がなく、地平線が天空と同じ青色に見えるのである。これが透き通るような印象を与えている。祭りのような夏が過ぎて、その後でどこか遠くを見つめていて、そして誘われているような気になって来るのである。 もはや感情の抑揚の浮き沈みもなく、鮮やかさも盛衰も消えて、生き生きした生命の躍動も、人生の輝きとその没落も、そんなことは、もはやどうでもよくなって、もはや取り戻せない過去のものとなってしまった、そんな色。灰色混じりの色である。秋の空の色は、同じ青色といっても、ほんの少し灰色交じりの薄い青色である。 そしてまた、西日の黄色がうすく混じった何か抗しがたくやりきれない、そんな色でもある。何かをあきらめ、断念を迫るような、そんな色である。過ぎ去って行くだけの、もはやどうにもならず、後戻りもできず、どうしようもなく、どうでもよくなってしまった、そんな色である。 気温はちょうどよいくらいで、夏とくらべると湿気というのが格段に減っている。だから凌ぎやすい。そしてまた、遠くの景色がよく見える。空が高く、透き通って見える。夏のようににじんで見えることも、春のように水蒸気のシロ色が混じることもなく、冬のような青の冷たい覚めた感じもない。 灰色混じりの世界である。祭りの終わりを告げるような、全体的にかすんでくすんだ灰色混じりの、さびれた感じの色。灰色の、風景の中で色が弱くなってかすれた、くすんだような色、まるで自分の記憶の世界を見ているような色、これが秋の色である。 |