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夏の空気の色は黄と赤の暖色系であるが、風景そのものには、黒色がほんの少し混じっている。そして同時にまぶしい。直射光自体が非常に強く、それが景色のコントラストの濃淡を際立たせ、さらにまた、影というのを強く感じさせるのである。また、日本列島の夏の蒸し暑さという、湿気(水蒸気)の多さが風景をして、より濃く強い色合いに見せている。 そして、天空の青色もほんの少し黒色が混じっている。これは、太陽と日本列島地表面が、ちょうど直角の位置関係になって、地表面から見る天空というのが、大気圏のもっとも薄い部分を透かして見ることになるからである。そしてその薄く透かして見えるその奥が暗黒の宇宙空間であって、これが夏の天空の色を、非常にわずかに黒色が混じった、強く濃い青色にしているのである。 全体としてふてぶてしく、あつかましく、図太い、そして力強い「色」である。コントラストの両端、白と黒の限界を超えたところは消えている。「白飛び」、「緑陰」といって、人間の目の許容値を超える部分は一律に白または黒として見えてきて、表面の模様が見えなくなってしまうのである。そしてまた、特に直射光による影の濃淡は非常に過激で明瞭である。そうしたことが一層、景色に力強い現実感ある印象を与えている。 湿度が高く、その水蒸気の絶対量自体が圧倒的な多さで世界を包んでいて、熱さというのが感覚を越えた生理的で心理的な蒸し暑いものとなっている。直接カラダの中に入って来るような暑さである。植栽の色も、湿気とその表面の蒸散作用によって、テカテカとツヤがあって、まぶしい光を反射している。 いたたまれない、生理的にも情緒的にもじっとしていられない、そんな蒸し暑さである。水と熱による生命の狂気を感じさせる、そんな暑さである。 夏は日差しが強く、まぶしく、明るく、そして風景には黒色が少し混じっている。直射光の強さが影を際立たせ、湿気の多さが景色を滲んで見せている。そうしたことが風景の鮮やかさに力強い奥行きを与え、そして強い現実感を感じさせるのである。迫ってくるような印象である。じっと留まっていることを許さないような、そんな印象でもって迫ってくる。水と熱による生命の爆発が、休む間もなく破壊と創造をくり返している、そんな「色」である。 |