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1、かすむ。



早春のころ。明け方はまだ肌寒く、風もひんやりしていて、少し冷たい。この冷たい地表面に、南からの湿気を含んだ、暖かい空気が入って来て、それが朝の霧(きり)となって地上を包む。午前中は風景全体に、よく薄霧(かすみ)が発生し世界全体が白っぽくかすんで見える。「白」というのは、つまり、水蒸気のことであって、空気中を漂う水のことである。この非常に薄い水蒸気が世界全体を覆い、風景全体がかすんで見えるのである。強い風もない。だから空気がほとんど動かず立ち込めたままである。

でも、都市化が進み、カスミが発生しにくくなった。だから、街中にいると、カスミに気づくことはあまりない。通りをへだてても、道路の向こうの先をながめても、やはり、カスミがわからない。靄(もや)なのか、排気ガスなのか、黄砂なのか、判別も出来ないし、また、特に気になるということもない。

しかし、同じ時刻に郊外へ出てみると、やはり、疑いようがない。ひんやりしていて、少し冷たい空気。そして、暖かく、少し強いと感じるくらいの直射日光。そしてなによりも、川岸や田んぼ、あるいは近くや遠くの山々、そうした景色といったものが、確かに霞(かすみ)に包まれて、かすんで見える。

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