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1、衝動。



たのしみ、よろこび、怒り、悲しみ、恐れ、いのり、あこがれ・・・といったもの。そうした心の動きは、夢の中、または孤独な一人ぼっちの意識の中では、人間のすがたとなって、その表情としてイメージされ、見えてくる。そして、意識され入りこんでくる。感情という人間の性質や心の動きは、人間のすがたとして、無意識の夢の世界に現れてきて、表現され、見えてくる。人間の表情こそが、もっとも人間らしい心の動きを表現しているからである。

恐れや、苦しさ、心地良さなどは、人間以外のもので表現することもできる。しかし、悲しみや憂い、祈り、また最も強烈な意味での恐ろしさというのは、やはり人間の表情が最もそれを良く表現し得る。なぜなら、それらは感情的なものではあるが、その多くの場合が精神の内面的な動きを現わすものだからである。従って、やはり感情的な場面を表現する場合、どうしても人間の顔の表情やそのポーズでもって表現されることが多い。

もちろん、そうでない場合もある。たとえば恐怖などは、おそいかかってくる動物のキバとして見えてきたり、自分が落ちてゆく谷底の闇の中としても見えてくる。あるいは、よろこびやここちよさなどは、春の野原や空中をただよう雲の中や、まばゆい光のなかの花園としても見えてくる。

つまり、いずれの場合にも、相手がいないのである。相手として見えて来ても、それは動物とかオバケとか悪霊であって、人間の姿ではないのである。オバケや花園は感情というよりも、むしろ衝動に近いものである。もちろん、逃げる自分のすがたとか、寝そべる自分のすがたも、たまには見えてくるが、それらはすべて夢の最後の場面、めざめる直前に見えてくるのである。

しかし、心の中で見ている相手とは、動物でも花でもオバケでもなくて、人間のことである。それも、自分自身のことである。自分で自分の心の中を見ているのである。だから、それをイメージとして表す場合、やはり人間の姿になってしまうのである。人間の姿こそが人間的な感情を最もよく表現し得るのである。

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