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4、あっちの世界。



だから、不思議な異和感をおぼえるのである。現実が非現実の、まるで異界の景色のように思えてくるのである。そして、近づいて見てみると、やはり何の変わり映えのしない、ごく当たり前の風景であって、それでもって離れて見てみると、やはり、かすんでぼやけた、自分のなかにある何か言い知れぬ、忘れもの、失われた記憶のように思えてくるのである。

霞(カスミ)のなかで、薄ぼんやりと浮かんでいる山々のシルエット。僕は、観念の世界の中で現実とあっちの世界を行ったり来たりしているのである。カスミのなかで、うすぼんやりと漂う影が、なにかを僕に暗示し、そして僕自身それに何かを期待し、そして予感している。

僕の中で何かが死に、そして生まれようとしている。交代し入れ替わろうとしている。だから、意識することなく何かを感じているのであり、自分の身体がそれを知っているのである。コトバとか理屈を無視して、僕の感覚が、感覚だけで何かを感じとっているのである。なにかが始まろうとしている。これは予感であり、予徴であり、そして確かな前兆である。

戻る。              続く。

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