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キリとかカスミで、風景がかすんで見えるのは、大気中に不飽和水蒸気があるからで、いくら水分が多くても、夏の高温下で飽和していれば、風景がかすんで見えることはない。 春に風景がかすんで見えるのは、いまだ大気の気温が低く、昼夜の温度差が著しく、そして夜露と雪解け水が、直射日光によって蒸発して、水分というのが供給され続けるからである。水蒸気が日中の気温の上昇によって飽和されるよりも、供給されるのが多いからである。これがキリとかカスミ(霞)の正体である。 早春から初夏にかけては晴天が多く、カスミが地表面から天空へと空全体を覆っている。明暗のコントラストが白い色の方へと傾いている。空気そのものが水分を含んでいて白っぽく見えるのである。これが、春カスミである。霧より薄く、靄(モヤ)よりも濃い水蒸気が世界を包む。非常に、非常に薄い雲が、空と地上全体を覆うのである。 地上の世界が、非常に薄い雲の中の世界へと変化する。このうす雲の中で光が拡散をくりかえし、影と陰影が限りなく透明になって、白いカスミが世界全体を覆う。晴天の日の早朝にキリとかカスミが多いのは、放射冷却によって地表面の気温が下がり、それだけ霧が発生しやすくなる。だから反対に濃いキリの日は、たいてい雲一つない晴天の日となる。 |