| index ＜ 日誌 < l見えないもの＜ 「異界」p8/ |
| それは、日常のごく普通の風景のなかでも現れることがある。もちろん、夢の中でもそれと似たような現れ方をする。空間がズレるのである。ズレて歪んでたわむのである。そして漂い、溢れだして、なにかの中身が表面に浮かんでくる。 明暗の濃淡、あるいは途切れとぎれの線が、ぼやけてかすんだまま、それがまるで生き物のように、どこかで互いに吸い付き合いつながっていって、おぼろげでぼんやりした何かのすがたとなってゆく。たいてい人のすがたである。 それが空間の軋（きし）んだ裂け目の中から露わに見えてくる。あるいは、裂け目そのものが、人のすがたとして見えてくる。たいていは、うつむいたままの苦悩と絶望のすがたであって、ありのままの露わな姿で、浮かんで迫ってくる。 |