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1、あらわ。



固く閉じた冬の世界から開いてめばえてくる。これが「春カスミ」の世界である。風景というのが、空気中に漂ううるおい(水分)によって、薄白く感じられるのである。

それは日本列島においては、暖かい陽ざしと、おだやかで柔らかい空気と、そしてそれに含まれる、潤いに満たされた水分の状態を指している。非常に優しく緩(ゆる)やかな感じなのである。かどがなく、ふっくらしていて、丸くて、非常に柔らかい、まるで溶けてしまいそうな、そんな肌触りである。

つまり、そこが生命の現れ出る場所なのである。白いカスミの中から、様々な色が鮮やかに、純粋な色となって浮かんでくる。空気の白さとは、生命の現われ出る場面、象徴であり、予感であり、そしてまた、願いであり、祈りなのである。

おおらかで、その中に何も他のものを含まず、いま生まれたままの純粋な形で現れている。それが生命であり、生命誕生の色なのである。すべての色とカタチといったものが、ありのままで、その本来の内面の世界を露わに映しだしている。外面と中身がまだハッキリと区別されていない。

追い立てられ、押し出され、浮かんできて、とまどい、ためらいながらも、その本来の姿といったものを、無防備に身がまえることなく、すなおに開いている。まったく、透明とでもいうか、外に対抗するものをすべて脱ぎすてて、自分のすべてを露わに見せている。それが白い空気の世界、「春カスミ」の世界なのである。


履歴へ              続く。

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