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日本列島が位置する温暖な気候。温帯域。 四季が巡り、極端に暑くも(熱帯)も、寒く(寒帯)もなく、温暖でおだやかで、そのなかで多種多様な動植物が育まれてきた。そして水が豊かなことも、とても重要な要因である。さらにまた複雑な地形やその季節的な変化の移ろいもまた、自然な条件となって、そこに暮らす人々に心情的な変化のキッカケというのを常にもたらしている。私たちは、そうしたウツロイの世界を生きている。 「ウツロイ」とは、 映る、写る、移る、そして、ウツロイゆく時間と空間の世界である。カラッポで空ろな世界、ぼんやりした虚ろな世界である。人間はその中を、ただ表面上ただよっているに過ぎないのである。だれもその中には立ち入らないし、その必要も、関心もないのである。それで十分だし、また、その中を覗(のぞ)いてはならない世界なのである。 それはオキテ(掟)であり、不文律、暗黙の了解なのである。それは問うても、覗(のぞ)いても、見てもならない、自分自身の真実のすがたであり、それを見ると自分が壊れてしまうのである。だからこそ、けっして見ても、知ってもならない、絶対の暗黙のオキテなのである。 そしてこの「ウツロイ」を掟(オキテ)という不文律で表現し、現実にする根拠となったのが、日本列島が持つ独自の自然と歴史だったのである。このような風土が、そしてその現実のすがたが、四季のありさまや、地形や気候といったものとして、たがいに作用し合い、入り乱れて、混合されて、その必然の結果として生み出されたのが、このオキテなのである。 |