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だが、単純にそう考えてはならない。例えば、水と日光のもっとも豊かな熱帯雨林は、その実体からいうと「緑の砂漠」なのである。豊かな水に恵まれ、そして誰よりももっと日光を得るために、熱帯の木々は上空へと昇る。そして太陽の光を求めて横方向にいっぱいに葉を広げる。まるで分厚い傘(かさ)で、上空の太陽をさえぎったような形になっている。 どういうことかというと、地上に太陽の光が届かないのである。木々の光の当たる部分は真昼なのに、その下はまるで夜のように暗いのである。これでは低木や草花は育たず、それに依存する昆虫や動物も生息しがたい場所なのである。 上空から見ると確かに緑がいっぱいで、生物の楽園のように見えるが、その下、地表付近は、むしろ死の世界なのである。だからかつてこの南の島々で戦った日本の兵隊は、戦う前に飢えで死んでいったのである。 さてそれでは、いったい何が言いたかったのかというと、有りあまるほどの水と日光があっても、すべての生物にとっては、必ずしも楽園とはならない、ということなのである。 |
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