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いままで日本列島を、島という特殊な地理的条件から見てきたが、これをもっと別の、地球規模でみると、そこにもかなり異質で、特殊な条件と制約が見られる。ひとことで言うと、境界線上に位置しているのである。 日本列島は、地球の上空で気象を決定している寒帯と熱帯の境界線上に位置している。明瞭な四季もここから来ている。寒帯の気流と、熱帯の気流が衝突する真下に日本が位置している。 また、大陸と海の境界線上、大陸性と海洋性の気団がせめぎ合う通り道ともなっている。梅雨がそうで、豊かな水と、豊富で穏やかな日光が、集約的な稲作農業を極限にまで発達させた。 そしてまた、日本を取り囲む海は、暖流と寒流の行きかう接触点、交流地点でもあって、まさに近海は海の畑であって、異常なまでに漁業を発達させた。牧畜が発達することはなかった。牧畜は、むしろ不向きであって、その必要もなかった。ある意味で中途半端なベジタリアンでもあった。 地底のプレートとマグマの縫い目、その境界線上にそって日本列島が並んでいる。水が清く、地形が複雑で山が多いのもそこから来ている。地震と津波が多いのもそうである。そしてまた、それは日本人の情緒と気質に深く影を落としている × × 上に述べた日本列島の自然環境といったものは、そこに暮らす民族の暮らしのあり方や型式に現実の枠を定めたものであり、その様式の「型」と方向を決定づけたものである。そしてまた、これが生産様式の内的必然性の原因にもなっている。 それは、目に見える暮らしの型、生活のカタチとして現れるだけでなく、意識のカタチ、情緒や気質を通しても表現される。つまり、自然環境といったものが、人間のくらしや意識といったものを条件づけ、規制し、方向づけているのである。そしてまた、だからこそ、それが現実であると言えるのである。 |
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