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5、衝動。



このような、本人の意思ではどうにもならない、精神の奥底から押し出されてくる絶対的な強制力、衝動や本能、叫びや戸惑い、驚き、ためらいなどといったもの、それは、自分の中に住むもう一人の自分のことなのである。

そうした無言の圧力、有無を言わせぬ強制力、そしてまた、そうした精神の限りない衝動といったものが、自分の中に住んでいて、それは自分の意思とか理性以前のもので、自分でもどうにもならないものなのである。

意識以前に、自分自身を支配し、成り立たせている必然性なのである。自分自身の存在の原理なのである。意識以前に生きている肉体のリズムや情緒といったものなのである。自分でもどうにもならない、自分自身の感覚と生理の「反応の仕方」なのである。

それは自分自身の精神と現実世界との接触面なのである。精神でも現実でもなくて、それらが互いに入り乱れて、混じり合い、錯綜し、織り合わされ、あるいは、もつれ、壊されても行く、精神と肉体との中間地帯なのである。

すべてが混沌として、とらえどころのない、気まぐれと移ろい、そして偶然と錯覚の世界なのである。精神でも現実でもなく、それ以前のところで、それらが交流し作用し合う「中間地帯」なのである。

そうして見る限り、人間は、自己の文化と外の自然の世界の中から、押し出されて来たものだと言える。それは人間を縛りつけ、押さえつけ、追い立てて行く条件であり、方向性なのである。そしてそれは同時に、自己の内的必然性でもあり、衝動なのである。


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