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たしかに、私自身と現実との間に何かが入り込んで来ている。そして、それが何なのか自分でも分からないのである。まったく、つかみどころのない、訳のわからないものなのである。もしかすると、何もなくて、私自身のただの思い込みに過ぎないのかも知れない。 そうだとしても、それでもやはり、何かが私自身と現実との間に入ってきている。現実の、目に見えるものとしてではなく、私自身の心の中の、観念の世界だけに存在する妄想だとしても、仮にそうだとしても、妄想として、現実にはない存在として、心の中だけで生息している。そうやって、自分自身と現実の間に入り込んできている。 それが何なのか自分でもわからないのである。自分のことなのに。見知らぬ何かが自分自身の中に入り込んできていて、自分の知らないところで、私を支配し、むりやり私の知らないどこかへ、私を追い立てている。それは私の預かり知らない、私の感覚や意識の届かない世界なのである。 そして、それは同時に、私の肉体を支配しているのである。私であって私でないもの。自分自身の感覚や、自分自身の意識の届かない身体の仕組みや、その生理作用。あるいは、自分ではどうにもならない身体のカタチや、持って生れた意識されることのない、感覚器官の機能や役割といったものを支配しているのである。 それらは、自分のものであって、そしてまた、自分ではどうにもならないものなのである。本人の意識や意思の届くことがない、それとは別の世界なのである。にもかかわらず、それは自分自身の身体(カラダ)なのである。どうにもならず、どうしようもなく、わけが分からないとはこのことなのである。 |