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そして、このわけの分からない自分の肉体というのが、常に、いつでもどこでも、私の知らないところで私を支配し、私の考え方や感じ方、そしてまた、行動を制約し条件づけている。そしてさらに、どこか定まった方向へと私をいざない続けている。 それは、私のすべての前提なのである。私の理由と、私が現実に生きている根源なのである。それは自分自身の精神以前のところで、精神自体を生み出し、それに姿とカタチを与えている根源なのである。生と死、否定と肯定、自己と他者、復活と衰亡、そうした狭間にあって、精神と肉体のちょうど中間にあるものなのである。 自分の中にあって自分とは別の部分、自分ではどうにもならない部分、自分の中に住んでいる、こうした他人のことなのである。たしかにそれは、意識もされるし自覚もされる。様々な場面で瞬間的に踊りでてきて垣間見せる、まばたきするくらいの瞬間である。 まるで、めまいのように脳裏をかすめることもあれば、指先の震えや、心臓の鼓動の異常な振幅、瞬間的な圧迫や呼吸困難、血流の異常な流れ、息苦しい。末梢神経が麻痺していて、身体のどこか奥底から、見知らぬ異様なリズムと抑揚が私をとらえて、一瞬、まばたきするくらいの一瞬、私は気を失っている。そして、目を開けたまま夢を見ている。未知の異様な世界へとタマシイがさ迷いだして、肉体を離れている自分に気がつくのである。 どこか正体不明の、未知の、異次元の世界へと精神がさ迷い出して、現実との間を行ったり来たりしている。そして、それが何なのか、なぜそうなるのか、どういうわけなのか、自分でもわからないのである。 |