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現実がなにか夢の中の別世界のように思えて来て、何をしても聞いても、自分にとっての現実感というのがないのである。何もかもが薄っぺらで、外面だけで、中身がなく、体裁と形式だけは立派であるが、中身が何もない、まるで夢の中の世界のように思えてくるのである。 そうだ。例えるならば、月明りの夜の世界のように。すべてがマヤカシの作りもののように思えてくるのである。影が薄くのっぺりしていて、光の明暗に乏しく、表面が暗い陰に呑み込まれて何も見えず、風景の輪郭だけが途切れとぎれに映っている。 何かの忘れかけていた記憶のように。現実から離れた意識の中だけの世界のように。現実を生きているという実感がとぼしいのである。あまりに平坦なのである。 平坦すぎるのである。感情も感覚も、そして呼吸する肉体のリズムも。何もかもが平坦過ぎていて、抑揚や起伏がなく、まるで生きているという実感がしないのである。まるで自分が死人となって、墓の中から現実の世界を見ている感じなのである。 だから、いつでもどこにいても、見知らぬ誰かに誘われている気がしてくる。あっちの世界に行かないかと。 |