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物かげや暗がり、人ごみの中、壁の間、形や色のコントラストの境界、それとか霧や雨のぼやけたマダラ模様の中で、影が見え隠れする。境界の裂け目の、暗がりの奥から僕をじっと見つめていて、そして、いざなっているのである。 何か僕には抵抗不可能な絶対の強制力、意志の力が働いていて、ぼくをひっぱってゆくのである。しかし。「ひっぱられる」というのは誤解である。ぼくはそれ以前に、それをのぞみ、無意識のうちにそれを期待し、求めていたからである。 だからこそ、なにも無いところに何かの気配を感じたり、予感したり、それと多少とも似たものを見ただけで、それが見えたと思えてくるのである。 だからまた、それが見えてくる場面、場所といったものは、常に何かの境い目、裂け目といった、連続した正常なものが中断した場面なのである。めくれて、剥がれて、途切れて、そしてえぐれて、パックリと傷口が開いた場所である。 つまり、日常と非日常、明と暗、連続と不連続、明瞭と不明瞭、そうした現実と非現実の境い目、現実が引き裂かれた空間の、裂け目の中から見えてくるのである。 |