index < 日誌 <ai原理< 「他人のような自分」p8/


 
5、感覚の思い込み。



そしてそれはまた、人間の意識や思考が社会と歴史の産物である、というのとも大いに関係している。そうした関係性のなかで、人間の感覚といったものも、それと意識されることなく、まるでそれが確固不動の常識のように、疑うべからずの本能のように思われて来たのである。

それは、つまり「感覚」は変化するものであり、歴史と社会のシステムとともに変形もし、変質もし、変化し、継続もし、そしてまた断絶もするものなのである。それは人間が無意識のうちに自分たちの都合と思い込みによって作り出し、カタチ作って来たものなのである。

従ってまた、その感覚の感じ方から、その社会のシステムのあり方といったものが理解されてもくる。感覚とは、つまり、その社会のあり方、システムの反映なのである。

従ってまた、たとえば、親子や男女の間の感情のカタチ、表現の仕方といったもの、そしてそれが定まり不変のものとして固まった家父長制や儒教思想といったもの、あるいはまた、プライバシーや個人や個性といったものも、社会そのものが持つ必然性や、その保存や維持、継続の必要性から求められてきたものなのである。

これは、例えば考古学で、古代の壁画を模写することによって、作者の感覚や感じ方を通して、その時代の思想や情緒の世界に入って行くのと似ている。そうやって、私たちは自分で自分を知ることになる。現実という歴史と場所を越えて直接精神の世界を見ることになるのである。


戻る。              続く。

index < 日誌 <ai原理< 「他人のような自分」p8/