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| 精神にしかないものを肉体の感覚に求めているというのは、誤解である。精神でも肉体でもない中間地帯というのがあって、それはまた同時に、自分の心と肉体が交流する領域でもあるのである。そしてそこで、今にも消えてしまいそうな自己のアイデンティティーを握りしめ、そして確かめているのである。 肉体と精神の中間地帯、自分の心と肉体が自分のなかで交流する、無意識の、意識されざる感覚の世界。まるで、思い込みと主観だけの一人ぼっちの世界、いまだ自分のなかで他者というのを知らず、自分で自分を見つめ、自分自身といったものを自覚することのない世界。いまだ何かを自分で意識するといったことのない世界。つまり、一人ぼっちの自分だけの世界である。夢の世界のようなものである。 そして、しかもそれは、いまだ自己と他者が分裂する前の、自己と他者が入り混じり、区別されない状態での原始的な、曖昧でぼんやりした自意識である。 他者を意識することのない自意識なのである。だからまた、孤独とも言えないし、ホントの自意識とも言えない。他者が存在しない世界での一人ぼっちは、一人ぼっちと言えないからである。相手としての他人がいて、はじめて、自分が一人ぼっちで孤独であると感じることが出来るからである。そうした、自己と他者の区別のない世界、区別がはじまる以前の世界である。 |