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6、プライバシー。



すべてが混沌としていて、わけもわからず漂い、さ迷っている状態。たしかなことが何一つ無い世界である。もしも、一つでも確かなことがあれば、それを基準にして座標軸を定め、そこから自分を確め、現実をつかんで行くことができるのであるが・・・。

そうしたことが出来ないでいる原始的な状態。責任も義務もなく、それ以前の自己の必然性といったもの、世界の理由とか原理といったものを知ることの出来ない世界である。

自分と他人がいまだ区別されずにいるというのは、その間の境界線もなく、従ってまた、プライバシーも人格もない、そうした概念そのものがない世界である。プライバシーと人格、さらに人権の前提となる自己と他者の区別そのものが無いのである。

個人の、神聖不可侵の精神の領域を、他人が自由に出たり入ったりしている。精神の境界線がないのである。カタチもなく、輪郭もなく、ケジメもない。だからまた、プライバシーも人格もなく、それ以前の自己と他者の区別も存在しない、一人よがりの思い込みと気まぐれだけが支配する、わけのわからない世界。確かなことが何一つなく、自分自身というのがハッキリと自覚されるとのない世界である。

しかし、そこはまた同時に、そこから自分自身というのが生まれ、そして自覚され、登場してくる最も初期の場所、ふるさとでもあるのである。混沌として錯綜した混乱の世界なのである。


戻る。             続く。

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