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暗がり、もの影、闇の奥、井戸の底・・・、あるいは、ダイヤモンドの輝き、美しい絵画や彫刻、それに女性・・・。めったにないことであるが、そうした場面に出会ったとき、その瞬間に僕は、それとは何か別のものを見ている。血が騒ぎ、心が躍り、身体が固まって、まるで血が逆流して、カラダ中の毛が逆立ちしたような、そんな感じである。 僕は、現実とは違う何か別のものを見ている。別の世界を見ている。見ているだけでなく、カラダ全体でそう感じるのである。そして、それがまた、わけがわからなくなるのである。なぜ、そうなるのか。まるで、自分の肉体が自分の精神にせまってくるのである。 何かを暗示し予感させる底無しの衝動として、自分自身を追い立て、責め立て、迫るのである。なにかの息づかいとして。心臓の鼓動の音として。まるで何かに撫で回されるような、まったく理解のできない原因不明の気配として、私自身をとらえて、入り込んできて、乗り移り、とりついてくるのである。 心臓の音色や息の律動、なにかに触れるヒヤリとした感触。まるで、自分が自分で無くなって、だれか見知らぬ他人に呑み込まれて行くような、そんな気分になるのである。しかし、勘違いしてはならない。自分を見失ってはならないのである。 |
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