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1、向こう側。



逆行であれば、見えているものの輪郭の外周部分は、光のマブしさの中で薄くぼやけて、広がっていって、そして周りに溶けて消えてゆく。ものの輪郭というのが白いシルエットのようになっている。途切れ途切れになって、うすく広がって行って、消えて、周りに溶けていって、同化している。

そして、逆光のまばゆいシルエットの中から何かが見えてくる。だが、実際に見えて来るのは、たいてい薄暗い影が見えているだけで、光の明暗(コントラスト)も、色の鮮やかさも消えていて、薄暗いという以外、そこからは何も見えないのである。

輪郭の白い光のマブしさと、その中の薄暗い灰色が見えるだけであって、そして光に囲まれた、この薄暗い陰の中から何かが見えてくる。のっぺりしていて、ぼやけて、薄ぼんやりした、輪郭を欠いた影のような世界である。

そしていくら目を凝らして見ても、それが誰なのか、何なのか知りようもなく、ただ、薄い影のようなものが近づいてくるのである。まるで何かの、あらかじめサダメられていた出会いのように、何かが自分にせまってくる。逃げることも、避けることもできない運命のように。

これは幻でも錯覚でもなくて、現実にあるものが見えているのである。ただ、それが何なのか知りようがないのである。だからそれは幻でも、かといって現実にあるものでもなくて、自分自身の心情の中で何かをまねき、求めていたもののように思えてくるのである。

それは現実には無いものであるが、それがこの目の前の、薄暗い灰色の向こう側にあるように思えてくるのである。きっと、どこかにあるはずの、かなたの世界の象徴を見ていると思えてくるのである。

それは自分の意識の世界の中を見てるのであって、自分で自分の心の中を「のぞき見」しているのである。だから、それに気づいたときはハッとするし、言い知れぬめまいのようなものを感じてしまう。そしてその「めまい」の中で自分が溶けて同化して行くのである。自分が誰かわからなくなって、もうどうでもよいように思えてくるのである。


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