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5、印象。



(注:「陰」は物体表面に見えるカゲ。「影」は、その物体が他の物体に落とすカゲのことである。だから陰にはカゲの濃淡があって、影にはカゲの濃淡がなく一律に暗いだけである)
 
景色の情景から光の方向性が消えて、光はどこからも、すべての角度から物体を照らしている。と同時に、物体はすべての方向へ均等に光を反射している。そして陰影もまたそうなのである。従って、どこから、どの方向から景色を見ても、光は常にこちらへ向かってくる。まるで、生き物のように。

それがもっともわかりやすいのは、この光の反射面の弱い所、陰の奥の部分である。見る人間の目の位置や方向に関係なく、光は常に順光となって物体を照らし、そしてその後ろの奧の陰と共に、常に見る者の目の方向に向いている。つまり、光というのが常に、いつでも、どこでも、どんなときでも常に自分の方向に向いているのである。

まず、表面の明るい部分が見えていて、そしてそれらの入り混んだ奥に行くに従い、陰が強くなって行くのである。乱反射する光は反射をくり返すごとに減衰してゆくので、入り混んだ奥の奥はどうしても暗くなって何も見えなくなって行くのである。そして、この暗い背景から浮かんで来て、それをを覆い尽くすように、景色が自分の方に向かって迫ってくるのである。

自分と現実との間の直接的で同時的な関係とはこのことなのであって、現実というのが自分にとって、まやかしと作りものの世界のように思えて来るのである。自分の思い込みの気まぐれだけで作り出された、偽りの、非現実の世界のような印象を受けてしまうのである。

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