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6、いろ。



彼女のヨコ顔、そしてそのすがたといったものは素晴らしく、魅力的なものだった。僕にはそれが、まるで小学生の女の子のように見えた。純真で透き通っていて、心の中がそのまま透明になって映っている、そんな情景であり続けた。僕はいまも、そう感じている。彼女はどうしてこうも美しいのかと。まるで天使そのものだ。

でも、正面から見ると確かに普通のオネェさんなのだ。これがわからない。なぜそう見えるのか。それは多分、彼女を見る僕が現実に戻ってしまっているからなのかも知れない。

正面から彼女を見るのは、彼女と話しているときか、いっしょに何かしているときであって、僕は現実に戻っていて、きっと彼女を理想化したり、なにかの象徴として見ることが出来ないでいるのである。いつの間にか生活者としての僕と彼女の関係に戻っているのである。

ありきたりの、与えられるままの、自分を見失い、定められたレールの上を歩くだけの、自己を喪失した普通の人間に戻ってしまっているのである。これでは、まるで「人型ロボット」だ。しらじらしく、わざとらしい、ヤラセと思い込みだけが支配する、なんの意味もないニセモノの世界なのである。これでは生きて行けない。精神が死んでしまう。

だからやはり、ヨコ顔なのだ。ヨコ顔以外にないのだ。そしてそれは水色である。彼女は、僕にとって水色でしかなかったのである。それ以外の色はあり得なかった。それは彼女の心が透明になって、外へ映し出された色なのである。それは、彼女自身の色であって、それ以外の色ではあり得ず、それしかなく、それは彼女の色だったのである。

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