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8、根源。


生きている自分にとって現実というのが、その中で、だれか見知らぬ他人の強烈な意志のようなものを感じたり、またそうした絶対者、たとえば神や悪霊による、絶対的な意志の強制を感じてしまう、そうした原因になっているように思えてくるのである。

のみならず、自分にとっての現実のすべてが、このような未知の絶対的な者によって支配され、強制され、動かされている運命や宿命のように思えてきてならない、そうした理由ともなっているのである。

そしてこのような「絶対者」とは、それこそがすなわち、種としての魂(たましい)であり、そしてまた、自己のアイデンティティーの根源のように思えてくるのである。

逃げることも逆らうこともできない必然性や、自分が生きて行く「道」のようにも思えてくるのである。敷かれたレールの上を歩いて行く以外にないのである。まるでそれしかなく、そうならざるを得ず、そしてまた、そうしなければならない自己の宿命や運命のように思えてくるのである。

まるで、水が高い所から低い所へと流れて行くように、そうしたどうしようもなく、どうにもならない、人間にとっての絶対的な強制力のように思えてくるのである。そうしたことが、真昼の物かげや暗がり、そして月夜の下の鏡の中や、それに夢の中で現れては消えて行って、そしていざない、導き、自分をひきずり込んで行くのである。

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