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「ぼやける」というのは、人間の目の水晶体(レンズ)の焦点が合わないからである。だからこの場合、ものの色とか明るさはそのままで輪郭線だけが不明瞭になるのである。これはレンズの都合なのである。 だからこの場合、背景とものの形の色と明るさはそのままで、それらが互いに浸食しあって、境界線が薄れて消えていって最後にはなくなって同化するのである。 境界線の線幅が広がっていって、もともとあったものの違い、つまり色と明るさの違いを定めていた境界線の輪郭がぼやけて行く。そして、広がっていって境界線が淡い色と明暗のゆるやかに変化する濃淡(グラデーション)として広がってゆくのである。 つまり、「ぼやける」という特徴は、ものの色とか明るさの変化ではなく、その輪郭だけがあいまいになって、色と明暗の境界がなくなって薄れて行くのである。 それはまた、あいまいになるのが背景とものの境界だけでなく、境界に囲まれたものの表面のでこぼこや陰影、模様もまた同じように曖昧になるということでもある。 ものと、ものの間の区別がなくなって、個性が消え失せてゆく。背景ともの、そしてそれらを包む風景全体の区別があいまいになって、全体として均質化してゆくのである。 輪郭の境界線が消えていって、区別がなくなって、わけがわからなくなっていって、全体として見えるのは、それらの痕跡としてのグラデーションや光の明暗と色の濃淡のみである。そしてそれらすらも限りなく薄れてぼやけて行くのである。 |
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