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2、さだめ。


僕はきっとマボロシを見ていたのだ。ずっと、ずっと物心がつく前からそうだったのだ。現実にないものを、現実の中に見ようとしていたのだ。そしてそれが、たしかに「見えた」と、そう思えたのである。彼女、K夫人のすがたのなかに。

それは宿命とか運命というものなのかも知れない。そうなるしかなかったのである。それ以外にあり得なかったのである。僕がこの世に生まれる以前から、そのように仕組まれ、プログラムされていたのだと、そう思えてくるのである。

実際、どのように考えても、それ以外にあり得ず、そう結論付けられてしまうのである。そうなるしかなかったのである。それは、僕自身ではどうにもならない必然の遭遇であったのだと。

僕は、もともとそのようなものとしてこの世に生まれ、送りこまれたのである。つまり、それが僕のサダメであったのだと。それなしには、僕は生きて行けず、そしてそれが僕が生きている理由であり、それだけが僕なのであり、僕のすべてなのだと、そう思えてくるのである。


戻る。                    続く。


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