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僕は、もともとそのようなものとして、この世に生まれてきたのである。つまり、もっとも大切な、人間として不可欠な、致命的なものが欠けたままの状態で、この世に送り込まれたということである。 つまり、死ぬしかないのである。生きて行けない、生きていてはならない存在として、この世に送りこまれたのである。このような、本来ならばあり得ない存在、いてはならない存在、よそ者、部外者、異人種、そうしたまるでマボロシのような存在であり続けたのである。 いつでも、どこでも。僕だけが現実から浮いている、足が地についてなくて、影が薄く、自分がハッキリと見えないのである。まるで自分が他人のように思えてくるのである。現実を生きている自分を見つめていて、自分の心の中をのぞき込んでいる、もう一人の自分の存在を感じてしまうのである。 身体から精神だけが分離して、現実とは別の世界を生きている。身体と精神が、それぞれ別の世界を生きているのである。精神だけが、見知らぬ未知の世界へとさまよいだして、ふわふわ、ひらひらと漂い続けて、果てしのない自分だけの世界を生きている。 |
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